日本語学校

認定日本語教育機関の授業科目と学習成果の評価 ― Can doと多様な評価方法

今回のポイント

認定日本語教育機関では、授業科目の到達目標を Can do で設定し、科目ごとに学習時間・評価方法・使用教材まで
定めて生徒に共有します。評価は定期試験に限定せず、パフォーマンス評価や成果物提出なども組み合わせ、
評価基準を事前に生徒と共有することが求められます。到達度テストと熟達度テストの使い分けも示されています。
対象
日本語学校
発表日
2024-10-15
制度の状態
施行済み(令和6年10月15日改定)
施行日
原文に記載なし
対応期限
期限の記載なし
学校の対応
確認推奨

認定日本語教育機関では、授業科目の立て方と学習成果の評価にも指針が示されています。時数や修了要件は別記事「教育課程編成」で扱ったので、ここでは科目をどう設計し、何をどう評価するかを整理します。

成績のつけ方が学校ごとの慣習に委ねられていた部分に、かなり具体的な要求が入っています。

五つの言語活動と「統合型」の科目

授業科目は、教育課程の到達レベル・到達目標・扱う学習内容を踏まえて定めます。

まず「日本語教育の参照枠」で示している五つの言語活動を扱う授業科目を設置します。その上で指針は次のように求めています。

「聴解」や「会話」などの個別の言語活動を扱う授業科目だけでなく、当該教育課程の目的や目標とする日本語能力に応じて、複数の言語活動を組み合わせた言語活動統合型の授業科目を設置することが望ましい

「読解」「聴解」「会話」と個別に並べるだけの科目構成は、望ましい形として示されていません。

分野の特性や学習ニーズを踏まえ、五つの言語活動以外の授業科目を設定することもできます。その場合は科目の目的を明らかにし、収容定員等の定められた基準の範囲内で実施します。

授業科目ごとに決めること

各授業科目について、次を定める必要があります。

  • 教育課程における一授業科目の全体としての到達目標
  • 学習時間
  • 一定の期間におけるレベルごとの学習目標と学習内容
  • 学習成果の評価方法
  • 使用教材

そしてこれらを、教育課程開始時および学期開始時に、必要に応じてさらに、生徒に説明し共有します。

目標は Can do で書く

指針は明確に指定しています。

各授業科目の到達目標、一定の期間・レベルごとの学習目標は Can do で設定する。

「N3レベルの文法を習得する」ではなく、「〜ができる」という形で書くということです。シラバスの書き方そのものに関わる指定になっています。

教材の使い回しには事前の整理が要る

一つの教材を複数のレベルや複数の授業科目にまたがって横断的に使用する場合、授業科目別の目標・学習内容に照らして適切に使い分けられるよう、使用予定の箇所をあらかじめ明確にすることが求められます。

同じ教科書を複数クラスで使うこと自体は問題ありませんが、「どの科目でどこを使うか」を事前に決めておく必要があります。

市販教材や独自作成教材については、著作権を侵害しないよう注意することも明記されています。

評価は一貫した方針のもとに設計する

学習成果の評価について、指針の出発点は次のとおりです。

到達目標、学習目標の設定から学習成果の評価方法、評価項目や評価基準、学習活動の設計まで一貫した方針のもとに編成する

目標・評価・授業がばらばらに決まっている状態を避ける、という趣旨です。

評価のタイミング

評価は、あらかじめ定めた一定の期間やレベルの区切りにおいて授業科目ごとに行います。加えて、期間内においても単元等ごとの評価を、必要に応じて適切に計画された頻度で行います。

学期末だけでなく、途中の評価も計画に入れておくということです。

評価方法はテストに限定しない

ここが実務上の変化点です。

評価方法は、単元ごとのテストや定期試験に限定せず、必要に応じて、パフォーマンス評価、自己評価、他者評価、成果物提出など、形成的評価、総括的評価を授業の目的と照らして適切に組み合わせて、必要な評価ツールを用いる。

さらに、評価活動そのものを学習活動に組み入れること、実施の際は生徒と評価基準を共有することが求められます。

点数のつくテストだけで成績を決める運用は、指針が想定する形ではありません。

到達度テストと熟達度テスト

2種類のテストを区別することも示されています。

  • 到達度テスト … 学習内容の習得度を測る
  • 熟達度テスト … 生徒のある時点での日本語能力を測る

到達度テストだけでなく、熟達度テストも必要に応じて組み込みます。その際は実施の目的・時期・結果の活用方法をあらかじめ設定し、計画的に実施することが求められます。

日本語能力以外の目標も評価する

論理的思考力、異文化間能力、日本語学習に関する意欲、自律的に学習する能力などを目標に組み込んでいる場合は、多様な評価方法を組み合わせて適切な評価活動を実施するとされています。

評価基準は事前に共有する

設定した評価の内容・基準等については、事前に教員や生徒と共有します。

そして学習成果の評価として、到達度の確認、学習状況の振り返り、授業科目ごとの学習目標の再設定などの学習活動を実施します。評価は成績をつけて終わりではなく、次の目標設定につなげる位置づけです。

学校としての備え

この指針に沿った運用は、科目と評価のデータ構造に影響します。

  1. 科目ごとに到達目標(Can do)・学習時間・評価方法・使用教材が定義され、生徒に開示されている
  2. 評価の種類を複数持てる … 定期試験だけでなく、パフォーマンス評価・自己評価・成果物提出などを記録できる
  3. 評価のタイミングが期末だけでない … レベルの区切りごと、単元ごとの評価が残る
  4. 到達度テストと熟達度テストを区別して記録できる

2番目が特に効いてきます。成績を「試験の点数」だけで持っていると、パフォーマンス評価や成果物提出をどう成績に反映したかが残りません。修了要件では到達目標の達成度が問われるので、点数以外の評価も含めて判定の根拠を示せる形が要ります。

3番目も、学期末の成績だけを保存する運用だと、途中の形成的評価が消えてしまいます。

根拠となる原文

記事に書いた内容は、以下の原文と照合しています。引用は一次資料のままで、表記も変えていません。番号は「出典・一次資料」に対応します。上の「発表日」「施行日」が「原文に記載なし」となっているのは、その日付が一次資料に書かれていないためです。原文にない日付を推測して補うことはしていません(編集方針)。

原文が推奨していること「日本語教育の参照枠」の五つの言語活動を扱う授業科目を設置し、個別の言語活動だけでなく複数を組み合わせた言語活動統合型の授業科目を設置することが望ましい

〇 「日本語教育の参照枠」で示している五つの言語活動を扱う授業科目を設置する。その 際、 「聴解」や「会話」などの個別の言語活動を扱う授業科目だけでなく、当該教育課 程の目的や目標とする日本語能力に応じて、複数の言語活動を組み合わせた言語活動 統合型の授業科目を設置することが望ましい。 出典 [1]

原文が求めていること授業科目ごとに到達目標・学習時間・レベルごとの学習目標と学習内容・学習成果の評価方法・使用教材を定め、教育課程開始時及び学期開始時に生徒へ説明し共有する

〇 授業科目ごとに、当該教育課程における一授業科目の全体としての到達目標、 学習時間 を定め、設定した一定の期間におけるレベルごとの学習目標と学習内容、学習成果の評 価方法、使用教材を定める。教育課程開始時及び学期開始時と、さらに必要に応じて、 学習者(生徒)に説明し共有する。 出典 [1]

原文が求めていること各授業科目の到達目標および期間・レベルごとの学習目標は Can do で設定する

〇 各授業科目の到達目標、一定の期間・レベルごとの学習目標は Can doで設定する。 出典 [1]

原文が求めていること一つの教材を複数のレベルや授業科目にまたがって使用する場合も、使用予定の箇所をあらかじめ明確にする

〇 一つの教材を複数のレベルや複数の授業科目にまたがって横断的に使用する場合も、 授業科目別の目標、 学習内容に照らして適切に使い分けられるよう、使用予定の箇所を あらかじめ明確にする。 出典 [1]

原文が求めていること到達目標・学習目標の設定から評価方法、評価項目や評価基準、学習活動の設計まで一貫した方針のもとに編成する

〇 各教育課程においては、到達目標、学習目標の設定から学習成果の評価方法、評価項目 や評価基準、学習活動の設計まで一貫した方針のもとに編成する。 出典 [1]

原文が求めていること学習成果の評価は一定の期間やレベルの区切りにおいて授業科目ごとに行い、期間内でも単元等ごとの評価を適切に計画された頻度で行う

〇 学習成果の評価はあらかじめ定めた一定の期間やレベルの区切りにおいて、授業科目 ごとに行うとともに、期間内においても、単元等ごとの評価も必要に応じて、適切に計 画された頻度で行う。 出典 [1]

原文が求めていること評価方法は単元ごとのテストや定期試験に限定せず、パフォーマンス評価・自己評価・他者評価・成果物提出などを組み合わせ、実施の際は生徒と評価基準を共有する

〇 評価方法は、単元ごとのテストや定期試験に限定せず、必要に応じて、パフォーマンス 評価、自己評価、他者評価、成果物提出など、形成的評価、総括的評価を授業の目的と 照らして適切に組み合わせて、必要な評価ツールを用いる。また、評価活動そのものを 学習活動に組み入れるようにし、実施の際は学習者(生徒)と評価基準を共有する。 出典 [1]

原文が推奨していること学習内容の習得度を測る到達度テストだけでなく、ある時点での日本語能力を測る熟達度テストも必要に応じて組み込み、目的・時期・結果の活用方法をあらかじめ設定して計画的に実施する

〇 学習内容の 習得度を測る到達度テストだけでなく、学習者(生徒)のある時点での日本 語能力を測る熟達度テストも必要に応じて組み込む。その際、実施の目的や時期、結果 の活用方法等をあらかじめ設定し、計画的に実施することが求められる。 出典 [1]

原文が求めていること設定した評価の内容・基準等は事前に教員や生徒と共有し、到達度の確認・学習状況の振り返り・授業科目ごとの学習目標の再設定などの学習活動を実施する

〇 設定した評価の内容、基準等については、事前に教員や学習者(生徒)と共有すること とし、学習成果の評価として到達度の確認、学習状況の振り返り、授業科目ごとの学習 目標の再設定などの学習活動を実施する。 出典 [1]

出典・一次資料

制度の対象や経過措置は、以下の原文で確認できます。

[1] 文部科学省 日本語教育:認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針 (令和6年10月15日改定) ↗資料確認日 2026年9月14日
認定日本語教育機関への移行をまとめて確認する →

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